2008年9月17日水曜日

「先生とわたし」 四方田犬彦



読んでみました。課題図書山積みなのにそちらは積読で(笑)
内容としては、なんというか、回顧録にしてもあまりに個人的で感傷的に過ぎてちょっと恥ずかしくなる感じの内容ではあったが、その字面よりも背景に流れる思想に考えさせられた。
こういうネチャっとしたというか、ドロっとした師弟関係っていつの間にかなくなってしまった。
そもそもの日本の競争力ってこんな感じの個人的な関係で出来上がっていたのではなかろうか、と追憶してしまう。
理屈や技術ではない、濃密な人間関係。それも決して自分で望んで得たものではないが、どういうわけか受け入れてきた歴史。そういういわゆる「先輩-後輩関係」というか「師弟関係」を失ってしまったことが我々が見失ってしまったものではないかと反省する。
それは決して「師」の側のみに優位があるわけではない。それはこの本を読めば判る。
「師」の孤独とアンビナレンツな後輩・弟子への感情。そして負けるわけにはいかない気概と負けを認めなければならない瞬間の悲しさ。
本来の日本の組織はこのくらいの濃密さで出来上がっていたはず。
これは何もおいらだけの感慨ではないようだ。
日産のN-Squareを紹介するNewsweekの記事によると、やはり社内でそういった社会関係を取り戻そうとする試みであったりする。きっとトヨタにはいまだに残っているもの。これを負の遺産ではなくポジティブに再評価していくこと。この重要性に気づかされる1冊。おすすめです。

Nissan’s N-Square: The beginnings of social networking at corporate Japan?
http://www.businessweek.com/globalbiz/content/oct2007/gb20071030_537362.htm?campaign_id=rss_daily

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